データから見える現状
日本能率協会マネジメントセンターの2024年調査では、管理職候補、いわゆる「プレ管理職」に対して育成支援を実施している企業は39%でした。
一方、「プレ管理職への支援を強化する必要がある」と答えた割合は64%です。
| 対象 | 育成支援の実施状況 |
|---|---|
| 新任管理職 | 7割以上 |
| 既任管理職 | 約5割 |
| 管理職候補・プレ管理職 | 39% |
「管理職になった後」の研修は比較的行われていますが、「管理職になる前」の育成は手薄です。企業も必要性には気づいているものの、具体的な仕組みにできていない状況だといえます。
ただし、この調査は人事・人材開発関係者101名への調査であり、日本企業全体の厳密な全国推計ではありません。「全国の61%がまったく実施していない」とまでは断言せず、「調査ではプレ管理職への支援実施率は約4割にとどまる」と表現するのが正確です。
なぜプレマネジメント経験が減ったのか
1.主任・係長などの中間的な役割が弱くなった
以前は、主任や係長の段階で、
- 後輩を指導する
- チームの仕事を取りまとめる
- 上司と社員の間をつなぐ
- 会議を進行する
- 小さな課題改善を任される
といった経験を積み、その延長で課長になる流れが比較的ありました。
しかし、組織のフラット化やポスト削減などにより、管理職になる前にマネジメントを疑似体験できる中間ポジションが減っています。リクルートマネジメントソリューションズも、係長などの中間ポジションが減り、昇進前のプレマネジメント経験を積みにくくなったと指摘しています。
2.優秀なプレイヤーが、そのまま管理職に昇進する
営業成績がよい、技術力が高い、仕事が速い、責任感がある――。
こうしたプレイヤーとしての実績を評価され、管理職に登用されるケースは現在も多くあります。
ところが、
- 自分で成果を上げる力
- 人を通して組織の成果を上げる力
は、同じではありません。
優秀なプレイヤーほど、自分で仕事をした方が早いため、部下に任せられない、細かく口を出す、自分の成功方法を押しつける、といった状態に陥ることがあります。
3.候補者本人に「次の役割」が伝えられていない
企業側では「将来の管理職候補」と考えていても、本人には伝えていないケースがあります。
そのため本人は、現在の仕事を一生懸命行っているだけで、
- 会社全体を見る
- 後輩を育てる
- 周囲を巻き込む
- 職場の課題を考える
- 上司を補佐する
といった経験を、意識的に積むことができません。
そして昇進時に突然、「今日から管理職として部下を育ててください」と言われることになります。
4.上司も候補者を育てる時間と方法を持っていない
2025年に紹介された東京商工会議所の調査では、管理職候補の育成課題として、次の回答が挙げられています。
- 管理職を希望する中堅社員が少ない・減った:34.5%
- 上長の育成力・指導意欲が不足している:32.1%
- 管理職候補になる人材が育っていない・対象者がいない:29.7%
- 業務が忙しく、管理職育成にかける時間がない:28.6%
- 効果的な育成方法が分からない:21.8%
企業が必要だと思っていても、現場の上司に育成を任せきりにしており、計画的に進められていないことが分かります。
プレマネジメント不足が生む問題
管理職本人の問題
- プレイヤー意識から抜けられない
- 部下に仕事を任せられない
- 自分で仕事を抱え込む
- 部下育成を後回しにする
- 目の前の業務だけを管理する
- 会社全体を見る視点が持てない
- 管理職としての自信が持てない
- 昇進直後から強い負担を感じる
部下や職場への影響
- 指示が一方的になる
- 部下によって対応が変わる
- 目標や判断基準が伝わらない
- 部下が育たない
- 報告・相談が減る
- 職場の問題が放置される
- 若手社員が「管理職にはなりたくない」と感じる
管理職の姿を見た若手・中堅社員が、「大変そう」「責任だけ増える」「自分には向いていない」と感じることで、次の管理職候補も減っていく悪循環が起こります。
実際、日本能率協会マネジメントセンターの2023年調査では、一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」と回答しています。一方、管理職本人では56.4%が「今の仕事が面白い」「管理職を続けたい」と回答しています。
これは、管理職の仕事自体に魅力がないというより、管理職になる前の社員に仕事の意味や面白さが伝わっていない面もあると考えられます。
中間管理職そのものも不足している
JILPTの企業調査では、中間管理職が「不足している」と答えた企業は、中小企業で44.2%、大企業で49.0%でした。
特に大企業では、前回調査の47.5%から49.0%へ不足感が強まっています。
管理職が足りないため、候補者を十分に育ててから登用する余裕がなくなり、「適任だから登用する」というより、「ほかにいないから登用する」という状況も起こりやすくなっています。
本来必要なのは「研修」だけでなく、経験の設計
プレマネジメントは、単に管理職向けの知識を先に教えることではありません。
管理職になる前から、少しずつ次の経験を積ませることが重要です。
- 自分に期待される役割を知る
- 会社全体を見る機会を持つ
- 後輩の指導や支援を担当する
- 小さなチームやプロジェクトを任せる
- 職場の課題を発見し、改善する
- 上司の仕事の一部を経験する
- 実践したことを上司や仲間と振り返る
- 自分が目指すリーダー像を考える
特に大切なのは、「本人を管理職候補として扱いながら、いきなり全責任を負わせない」ことです。
次世代リーダー育成コースとの関係
今回の「次世代リーダー育成コース」は、まさにこの日本企業の空白を埋める内容になっています。
- 自己理解と役割認識
- 会社全体を見る視点
- 周囲を巻き込む影響力
- 職場課題を発見し、考える力
- 人と向き合い、成長を支援する力
- 自分らしいリーダー像の言語化
これらは、管理職になってから初めて学ぶのでは遅い内容です。
したがって、このコースは単なる「若手・中堅社員研修」ではなく、
管理職になる前に、管理職として必要な視点と行動を段階的に身につけるプレマネジメント教育
と位置づけることができます。